もしあなたの家のトイレが壊れてしまい、一時でも水が流れなければあなたならどうしますか?

世界を見渡すと、実に3人に1人にあたる約23億人もの暮らしに安全で衛生的に使えるトイレが備わっていません。さらに、その内8億9200万人(2017年調べ)もの人々が使えるトイレすら持たず、屋外での排泄を余儀なくされていると言われています。

ハビタット・ジャパンは、株式会社LIXILと協働で、2018年4月より、同社が途上国向けに開発した簡易式トイレ「SATO」の設置をインド・ミャンマーで開始しました。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

安全な水や衛生的なトイレへのアクセスは、2015年9月の国連サミットで採択された、国際社会が2030年までに実現すべき「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」の一つです。ハビタットでは、健全な生活を営む基盤を築く住まいの支援を通じて、目標6の「安全なトイレを世界中に」の実現に取り組んでいます。

この水と衛生の課題を深刻に抱える国の一つが、LIXIL社と協働で支援にあたるインドです。13億人にのぼる人口の内、その40%にあたる約5億2000万人(2015年調べ)が道路脇や藪の中、川や海で用を足している状態にあると言われています。こうした屋外排泄の問題は、排泄物が適切に処理されず、雨水に交じって食品を汚染するなど、コレラや下痢、赤痢といった健康問題を引き起こす要因となっています。この状況を受け、インド政府は2014年にトイレ設置計画「スワッチ・バーラト(クリーン・インディア)」キャンペーンを立ち上げ、トイレ設置の補助金を出すなど、2019年10月までに国内の屋外排泄ゼロを目指してトイレの普及に着手し始めました。しかしながら、インドでは人口の約80%近くがヒンドゥー教を信仰し、その宗教上の「浄」と「不浄」の概念から、不浄とされるトイレの利用が敬遠されてきました。特に汲み取り式トイレの設置が一般的なインドでは、定期的な排泄物の取り出しが利用を阻めてきた上、例え設置できたとしても、メンテナンス不良のため使えなくなるケースなど、宗教的な問題が介在する複雑な問題です。

こうしたトイレ普及の進まないインドの課題解消を目指して、ハビタットでは2015年に新たなトイレプロジェクトを立ち上げました。設置にあたり、まずはトイレの利用を促す行動変容に向けた教育・啓発活動を各地域で行ってきたほか、トイレ設置後は定期的なモニタリングを行い、継続利用をサポートしてきました。そして、この取り組みを更に支えるべく、LIXIL社と協働で、同社が途上国向けに開発した簡易式トイレ「SATO」の設置支援を2018年4月より開始しました。

途上国向けに開発された簡易式トイレ「SATO」のメリット

・シンプルな構造で設置が簡単
・少量の水で洗浄が可能
・虫や悪臭が上がってくるのを低減
・数ドルという低価格帯

※株式会社LIXILは「みんなにトイレをプロジェクト」を立ち上げ、安全なトイレの普及に取り組んでいます。

計360基のトイレ設置と利用を目指して

インドで設置する「SATO」は、インド政府が推奨する2つの便槽を備えた構造を持つ簡易式トイレです。レバー一つで使用する便槽を切り替えることが可能です。それにより、一定期間置かれた便槽内の汚物は分解され、中身を容易に取り出すことができるようになりました。SATOの利用は、トイレを必要とする家族が抱える宗教上の設置課題「不浄」の概念、そして汲み取り式による家族の維持負担を軽減させることができるようになりました。

昨年の4月にSATOによる支援が決定してから半年、現地スタッフはSATOの普及を目指して3つの地域内で集会や各家庭を訪れ、住民に衛生的なトイレの必要性、SATOのメリットについて説明を繰り返してきました。そして、計360世帯へのSATOの設置が決定。日本の技術により開発された安全で衛生的に使えるトイレの設置作業がインドの各地域で行われています。