途上国で住まいと貧困の問題に取り組むハビタット・フォー・ヒューマニティですが、先進国においても、独自の住まいの問題に取り組む活動を行っています。高齢者の増加や地域との希薄なつながりなど共通の社会性が背景にある日本、香港、シンガポールでは、「Project HomeWorks(プロジェクトホームワークス)」という支援プロジェクトを進めています。主に高齢、障がい、低所得などの理由により自分だけでは住環境を整えることが難しい方に、住まいの修繕や清掃サポートを行っています。また、連携団体が運営する生活困窮者のためのシェルターなど一時的な住まいの修繕支援もこのプロジェクトの大きな活動のひとつです。ボランティアの力が欠かせないこれらの活動では、ハビタットの理念に賛同くださる企業のボランティアチームと協働する機会も増えてきました。

今回、ニューヨークに本部を置くメットライフ財団とハビタット・フォー・ヒューマニティ・インターナショナルのグローバルパートナーシップにより、日本でのメットライフ生命のボランティアイベントが実現しました。

2018年10月、メットライフ生命の社員ボランティアとその家族や友人総勢37名が、計3回に渡り、プロジェクトホームワークスの活動に参加しました。初回となる10月6日は10名が都内近郊にあるシェルターに集まりました。このシェルターは、路上で暮らすなどホームレス状態にある人が、その状態を抜け出すための一歩を踏み出す際に一時的に暮らせる場所です。建物の1階は事務所とサロンスペース、2階は一般的なアパートのような作りです。一人ひとりに個室があり、プライバシーが守られた状態で、心身ともに休める場所として大切な住まいです。しかし建物は古く、畳や壁の傷みが進み、障子や網戸も破れているところが目立っていました。特に一部屋の居室はかなり状態が悪く入居者を入れられないという状況でした。

終日かけてボランティアは、大工さんの手ほどきを受けながら内壁の塗装をし、障子や網戸の貼り替えを行いました。年間17名前後の入居者、30名前後のサロンスペースに来る相談者が利用するシェルターで、住まいと共有スペースの環境改善を実施することができました。参加したボランティアからは、「こうした場所があるということを知ることができて勉強になった」「大工さんや建築士さんに教えてもらえることも楽しみのひとつだった」といった声が聞かれました。

第2回(10月17日)と、第3回(10月31日)は、個人宅での活動を行いました。第2回には9名、第3回には18名が参加し、計5世帯、6名のホームパートナーのための支援を行うことができました。ホームパートナーはそれぞれ何かしらの困難を抱え、その居住環境はかなりの改善が必要な状態でした。例えば72歳になる内山さん(仮名)は、数年前に患った脳梗塞のため身体の一部に震えがあり、体力も衰えています。過去には映画を見て英語を勉強したり、料理が趣味だったという内山さんの住まいは、片付けができなくなってしまってから書類や衣類が積み重なり、台所にも荷物が山積みの状態になっていました。(内山さんのホームパートナーストーリーはこちらからご覧いただけます)

メットライフ生命のボランティアチームにより、片付けと清掃、棚やベッドの修理が行われ、台所も寝室も綺麗に片付きました。寝室では、布団セットを新しいものに交換し衛生面も改善することができました。内山さんの他にも4世帯の居住環境の改善を実施し、今年のハビタットとメットライフ生命社協働での活動が無事に終了しました。

清掃サポートの活動は、ホームパートナー自身もできる限り参加しています。今回、どのホームパートナーも、不要なモノと取っておくものを進んで仕分けたり、ボランティアさんと積極的にコミュニケーションを取りお礼を伝えるなど、それぞれができる範囲でできることを行い、ボランティアと一緒に汗をかきました。ボランティアからは、「様々な家財を片付け、本人とも少しずつお話しする中で、昔の暮らしや楽しんでいた趣味が垣間見えた」「住環境が悪化してしまうことは、決して特別なことではなく、誰にでも起こり得ることだと感じた」という声が聞こえました。こうしたボランティアとの交流は、ホームパートナーにとってかけがえのない時間でもあります。これからもハビタットは、ボランティアとともに、住環境の改善と、それによって生まれるつながりを育む活動を行っていきます。