[バングラデシュ ブアプール発 12月18日 プロジェクト・マネジャー 渡辺 和雄]  朝日に輝く竹をまえに、思わず笑みがこぼれた。
 霜がおりて、青々とした竹の地肌がしっとりと汗をかいているように見える。
 7時に起きてから早々に顔を洗い、まっすぐに竹が積んである道路わきにやってきた。
 バンブー・ハウス、竹の簡易住宅の資材になる竹が、やっと届いた。
 前夜、竹を満載したトラックがやってきたのが、10時半。
 10時に開いたミーティングで、「トラックがまだ来ないのだから、明日の朝になるだろう」とわたしが言うと、スタッフたちは一斉に首を振って「今晩だ」
 トラックの運転手の携帯に電話をかけてもらうと、もうブアプールの街まできている。あと15分、いや30分で到着するという。
 
 2日前に届く予定が、昨日になり、それが今日に延びた。わたしは半信半疑だった。
 それぞれの居室にひきあげて30分後、ハデなクラクションが道路のほうから続けざまに鳴る。ドアをあけて見ると、闇のなか、土手の上の道に、ヘッドライトをこうこうとつけたトラックがとまっている。
「来たぞ!」わたしたちは、とびだした。
 
 IMG_0339 edtd.JPGトラックの荷台に積まれている竹は、およそ270本。あまりにも長く荷台からはみだしているために、道路からこちらの作業場へおりる道を曲がれない。道路沿いの木々にひっかかってしまうのだ。
 それで、道路のわき、アスファルトの横の土手に、竹を降ろしてもらうことになった。
 トラックに乗ってきた人夫たちが何も見えない暗闇のなかで、掛け声をかけては1本づつ竹を降ろす、というか放り投げる。
 深夜でも、ここはバングラディッシュの幹線道路であるため、バスやトラックが時折、通り過ぎていく。そのヘッド・ライトをたよりに見ると、人夫が2人、竹を持ち上げては別の2人に渡し、その2人が竹を下に降ろすという手順。
 バスやトラックが通り過ぎるたびに、もうもうと埃があがる。現地スタッフたちは、布を頭にまいており、わたしも着ている冬用のジャンパーからフードをとりだして頭にかぶった。
 
 夜空には半弧の月と無数の星。明かりはそれだけで、最初の2人が同じ竹をとりあげるだけでも、時間がかかりそうなものだが、単に無造作に竹を積んであるのではないのか、慣れているのか、その両方か、次から次へと竹は道のわきに落とされる。
 
 トラックの横を歩いて、竹の長さを歩幅で測ってみると、荷台からはみでている部分が25歩。荷台が13歩。どうりで、長いわけだ。
 
 2時間もたとうとする頃、荷台はからになった。彼らの仕事はここまでだ。IMG_0301 edtd.JPG
 途中、会計係のスタッフが着ぶくれてやってきた。毛布を頭からかぶって「寒い」を連発し、ぶるぶる震えている。「もう、戻っていいから」と居室に返した。
 
 スタッフの1人が言った。「これだけの量の竹で、270本。竹の家を120戸建てるために必要な竹が全部で9000本。これじゃ、作業場がすぐに竹でいっぱいになって、竹置き場になってしまうヨ」わたしたちは、爆笑した。
 いっぱいになってしまう前に、竹を所定の長さに切り分け、それを隣のため池に約1週間つけておく。水に浸すのは、竹の強度を増し、防虫にもなるからだ。
 
 それらの作業は明日からだ。