ボランティア募集中東北支援募金受付中
 
2011年5月から活動している岩手県大船渡市で、自分で家を建てる佐藤さん(仮名)を支援することになりました。佐藤さんが暮らす越喜来では、東日本大震災の人的被害は100人近く、家屋の被害は320世帯に上りました。佐藤さんの自宅があった浦浜南地区は、特に被害が甚大で、越喜来小学校が被災したほか、多くの建物が津波で流されました。
IMG_1996.jpg震災より2年半以上たった今でも、被災された多くの方は仮設住宅やみなし仮設住宅(※1)で暮らしています。そして、期限付きの仮設住宅で暮らす被災者の多くは、まだ自宅再建の目途がたっていません。将来、仮設住宅を出た後の選択肢として、防災集団高台移転(※2)、災害公営住宅(※3)への入居、自力による自宅再建(※4)の中から一つを選ばなければならない現実に、被災者は直面しています。しかし、佐藤さんはいずれの選択肢も選ぶことが出来ない状況に置かれていました。
佐藤さんは、腕のいい大工でしたが、家を継ぎ漁業にたずさわるために20代半ばで故郷越喜来に戻りました。40代で体を壊してからは、漁業を営むお兄さんの手伝いを無理のない程度にしてアルバイト収入を得ていました。そんな佐藤さんの生活は、自然豊かな越喜来の山や海と地域の強い絆に支えられていました。しかし、東日本大震災が起き、自宅も船も失い、生活の手段を奪われて仮設住宅で暮らす佐藤さんは、自分の地域には災害公営住宅建築の予定がないことを知り、自宅を再建する術もないことに気づきました。
IMG_2007.jpgそんな中、越喜来地域で支援活動をしているハビタット・ジャパンと出会い、ハビタットの海外の支援ではボランティアと共に家主が自分で家を建てていることを知った佐藤さんは、「おらは若いころ大工だったのす。おらが実験台になる。おらを実験台にして、他の行き場のない人の家も建ててけろ」と熱い胸の内を伝えてくれました。
ハビタット・ジャパンは、佐藤さんが置かれている状況を検討し、高齢のお母さんと佐藤さんが、再び地元のコミュニティで生活することを可能にするために、佐藤さんが自分で自宅を建てるセルフ・ビルドを支援することにしました。そして、佐藤さんが家を建てる上で必要な情報を得られるよう、様々な地域リソースの融合に尽力しました。幸いなことに地域の工務店や設計士の方々の協力を仰ぐことが出来、専門家としての知識や経験を提供していただけることになりました。セルフ・ビルドの準備を始めてから確認申請が下りるまでには2か月以上かかりましたが、佐藤さんは、越喜来の方々や日本各地からのボランティアと共に、先月末に建設作業に取りかかりました。
 
 
自分で書類作成や諸手続きを行い、作業のほとんどを行うセルフ・ビルドという方式では、様々な経費を節約し、建設費を大幅に下げることが出来ます。また、地域の方々や全国のボランティアと一緒に建設作業を行うことで、家主も自信を持つことができ、地域住民が助け合うことでお互いの絆も更に深まるとハビタット・ジャパンは考えています。すでに佐藤さんの目の奥には、将来の住処に不安を抱いていたころとは違い、生き生きとした輝きが見て取れます。ハビタット・ジャパンは今回の支援を通し、日本における住宅問題への取り組みのあり方を模索しています。
 
 
*1震災などで住居を失った被災者が、民間事業者の賃貸住宅を仮の住まいとして入居した場合に、その賃貸住宅を国や自治体が提供する「仮設住宅」(応急仮設住宅)に準じるものと見なすこと。また、そうした賃貸住宅や関連する制度。(weblio辞書より引用)
*2災害に遭い、引き続き被災の恐れがある地域の住宅を集団で移転させる日本政府事業の一つ。通常は10戸以上の集団移転が要件だが、東日本大震災では特例で5戸以上から適用されている。自治体が移転先を造成する費用のほか、津波で被災した土地を災害危険区域に指定して買い取る費用も国が負担する。
*3被災し、自宅を用意できない人のための公営住宅。家賃は低めに設定しているが、10年後には(大船渡市の場合)通常の公営住宅の家賃に戻る。収入や家族人数など、総合的に考えた際に、自宅を再建するより高い場合もある。また、行政からは新築を建てる時に出る400万円の補助金は出ず、すべての被災地域に公営住宅が出来るわけではない。
*4日本政府の用意したものに頼らず、自ら住宅を再建すること。
 
◆セルフ・ビルド支援の進捗は、ハビタット・ジャパンブログで更新中。こちらよりご覧ください。
 
◆支援状況/現地リポート
2013.11.18 【東北支援 第123報】宮城県女川町:「ゆめハウス」修繕支援開始
2013.11.13 【東北支援 第122報】岩手県大船渡市:末崎城跡にツリーハウスを建設中
2013.10.11 【東北支援 第121報】岩手県大船渡市:ソーラー発電設備設置完了
2013.10.10 【東北支援 第120報】宮城県東松島市:川下地区センターの修繕完了
2013.09.30 【東北支援 第119報】岩手県大船渡市:ホームオーナーストーリー(7)
2013.09.17 【東北支援 第118報】宮城県東松島市:30世帯の被災住宅修繕を完了
2013.09.02 【東北支援 第117報】岩手県大船渡市:国連レポートで住宅修繕事業を紹介
2013.08.29 【東北支援 第116報】宮城県東松島市:ホームオーナーストーリー(6)
2013.08.26 【東北支援 第115報】東北から全国へ!学生支部と復興新聞創刊
2013.08.19 【東北支援 第114報】岩手県大船渡市:南区公民館でソーラーパネル贈呈式
2013.08.15 【東北支援 第113報】岩手県大船渡市:ナショナルジオグラフィックにて紹介
2013.08.05 【東北支援 第112報】宮城県東松島市:地区センターの改修と耐震補強を支援
2013.07.18 【東北支援 第111報】岩手県大船渡市:ホームオーナーストーリー(5)
2013.06.25 【東北支援 第110報】宮城県東松島市:希望のあかり商店街 オープンへの道のり
2013.06.07 【東北支援 第109報】岩手県大船渡市:末崎城の城跡整備を実施
2013.05.31 【東北支援 第108報】岩手県大船渡市:個人世帯へのソーラーパネル設置開始
2013.05.20 【東北支援 第107報】宮城県名取市:東屋完成、市長から感謝状
2013.05.15 【東北支援 第106報】宮城県南三陸町:桜舞う遊歩道にベンチとテーブルを制作
2013.04.20 【東北支援 第105報】宮城県東松島市:ボランティアが見る復興の今
2013.04.16 【東北支援 第104報】企業による復興支援を考える会の開催
2013.04.09 【東北支援 第103報】宮城県名取市:小塚原南集会所の修繕が完了
2013.03.18 【東北支援 第102報】宮城県東松島市:住宅修繕支援を市内全域に拡大
2013.03.13 【東北支援 第101報】宮城県東松島市:河北新報、家屋修繕支援事業を紹介
2013.03.08 【東北支援 第100報】震災から2年:「住まいを、コミュニティを築く」
2013.02.01 【東北支援 第99報】岩手県陸前高田市:市民憩いの仮設図書館でひさし製作
2013.01.30 【東北支援 第98報】宮城県女川町:出島で全5棟の漁師小屋が完成
2013.01.29 【東北支援 第97報】宮城県東松島市:ハビタット・ジャパンへ感謝状
2013.01.08 【東北支援 第96報】岩手県大船渡市:コンサル支援で住宅再建相談会を開催
 
※支援募金受付・2012年以前の東北支援レポートはこちらへ。